米国二次性副甲状腺機能亢進症治療市場の規模・動向2032年

米国における二次性副甲状腺機能亢進症（SHPT）治療市場：慢性腎臓病の罹患率上昇の中で成長を導く

米国の二次性副甲状腺機能亢進症治療市場は、慢性  腎臓病（CKD）の負担増大と人口高齢化を背景に、堅調な拡大を見せています。二次性副甲状腺機能亢進症（SHPT）はCKDによく見られる合併症で、副甲状腺が低カルシウム血症と高リン血症に反応して副甲状腺ホルモン（PTH）を過剰に産生し、骨やミネラルの異常を引き起こします。2018年の市場規模は43億4,000万米ドルで、2032年には98億8,000万米ドルに達すると予測されており、2019年から2032年の予測期間中に年平均成長率（CAGR）7.5%で成長すると見込まれています。この成長は、世界最大のヘルスケア市場である米国において、革新的な治療法と治療へのアクセス改善が極めて重要であることを示しています。

CKDは3,700万人以上のアメリカ人、つまり成人人口の約15%に影響を与えており、SHPTは極めて重要な治療領域として浮上しています。米国食品医薬品局（FDA）による新薬の承認と薬物療法の進歩が、この勢いを加速させています。この記事では、市場のダイナミクス、薬剤クラスと流通チャネルによるセグメンテーション、主要な推進要因、課題、競争環境、そして将来の展望について深く掘り下げます。

二次性副甲状腺機能亢進症を理解する：慢性腎臓病（CKD）のサイレント合併症

二次性副甲状腺機能亢進症は、慢性腎臓病によって腎臓のカルシウムとリンの恒常性を調節する能力が損なわれることで発症します。末期腎不全（ESRD）を含むCKDステージ3～5では、腎臓がビタミンDを活性化できず、リンを排泄できず、副甲状腺肥大と副甲状腺ホルモン（PTH）の過剰分泌を引き起こします。この連鎖反応は、高回転骨疾患（線維性骨炎）、血管石灰化、骨折、そして心血管リスクにつながります。

症状としては、骨痛、かゆみ、筋力低下、疲労などが挙げられますが、多くの患者は進行期まで無症状のままです。診断には、血清中副甲状腺ホルモン（PTH）（300 pg/mL超）、カルシウム、リン、25-ヒドロキシビタミンD濃度の測定に加え、副甲状腺シンチグラフィーなどの画像検査が行われます。米国腎臓財団の腎臓疾患アウトカム品質イニシアチブ（KDOQI）ガイドラインでは、透析患者におけるPTH目標値を150～300 pg/mLとすることを推奨しています。

米国腎データシステム（USRDS）によると、米国では毎年55万人以上が透析を受け、さらに11万人が腎移植を受けています。透析患者のSHPT有病率は50%を超えており、介入が急務となっています。早期治療は合併症を軽減するだけでなく、入院率と医療費の削減にもつながります。CKD関連医療費は年間500億米ドルと推定されています。

治療法：多面的なアプローチ

SHPTの管理は段階的な戦略に基づきます。具体的には、食事性リン制限、リン吸着薬、ビタミンD誘導体、カルシウム受容体作動薬などが挙げられます。難治性症例では、透析最適化と副甲状腺摘出術が補助療法として用いられます。市場は薬剤クラス別に細分化されており、これらのカテゴリーが優位に立っていることが分かります。

薬物クラス別

1. カルシウム模倣薬：副甲状腺細胞上のカルシウム感知受容体（CaSR）をアロステリックに調節するこれらの薬剤は、カルシウム濃度を著しく変化させることなく、副甲状腺ホルモン（PTH）の分泌を抑制します。アムジェン社のセンシパー（シナカルセト）はこの分野をリードしており、2022年には40%以上の市場シェアを獲得しています。FDA承認済みのエテルカルセチド（パルサビブ）は静脈内投与が可能で、透析現場における服薬アドヒアランスを改善します。このクラスは2022年に18億米ドルの市場規模を生み出し、バイオシミラーやカプスパルゴなどの次世代経口薬の牽引により、年平均成長率（CAGR）8.2%で成長すると予測されています。
2. ビタミンDアナログ：ビタミンD受容体の活性化に不可欠なこれらの薬剤は、PTHを抑制し、低カルシウム血症を管理します。アッヴィ社のヘクトロール（ドキセルカルシフェロール）とゼンプラー（パリカルシトール）が主流であり、パリカルシトールはPRIMO試験などの試験において優れた心血管安全性を示しています。このセグメントは2022年に12億米ドルと評価され、経口剤と静脈内剤の恩恵を受け、慢性腎臓病（CKD）への意識の高まりを背景に年平均成長率7.1%で成長します。
3. リン酸吸着剤：高リン血症のコントロールに不可欠な薬剤には、カルシウム系（例：サノフィ社のセベラマー）と、ベルフォロ（スクロオキシ水酸化鉄）のような非カルシウム系薬剤が含まれます。非カルシウム系吸着剤は血管石灰化リスクを低減します。このカテゴリーは2022年に14億米ドルと最大の市場規模となり、鉄系薬剤による錠剤の負担軽減のイノベーションにより、6.8%のCAGRで拡大すると見込まれます。

KLOTHOアゴニストやFGF23を標的としたRNA干渉（RNAi）などの新しい治療法は第II相試験中であり、2030年までにパラダイムシフトが起こると期待されています。

流通チャネル別

1. 病院・小売薬局：2022年の売上高の65%（28億米ドル）を占めるこのチャネルは、透析センターや外来クリニックにおける医師からの直接処方箋によって成長しています。CVSヘルスやウォルグリーンといった大手小売企業は、慢性疾患治療のアドヒアランス向上に貢献しています。
2. オンラインチャネル：COVID-19以降急成長を遂げたこのセグメントは、2022年には9億米ドルに達し、年平均成長率（CAGR）は12%でした。Amazon PharmacyやGoodRxといったプラットフォームは、割引や自宅配送を提供しており、テクノロジーに精通した患者にとって魅力的な存在となっています。
3. その他: DaVita などの専門薬局や透析提供者を含むその他は 20% のシェアを占め、メディケア パート D による一括支払いを通じて成長しています。

市場の推進要因と制約

主な推進要因

• CKD（慢性腎臓病）の発症率上昇：CDC（米国疾病対策センター）によると、2010年以降、CKDの症例数は30%増加しており、糖尿病（症例の44%）と高血圧（28%）との関連が指摘されています。2030年までに、ESRD患者数は80万人を超える可能性があります。
• 高齢化の進行: 65 歳を超えるアメリカ人は 5,400 万人に達し、加齢に伴う CKD リスクによって SHPT の罹患率が増大しています。
• 技術の進歩：AIを活用した診断技術とPTHトラッキング用ウェアラブルモニターにより、早期介入が促進されます。インフレ抑制法（2022年）により医薬品の価格に上限が設定され、購入しやすくなります。
• 償還ポリシー: メディケアは、SHPT 薬剤を含む透析費用の 80% を負担し、利用を促進します。

課題

• 副作用：カルシウム刺激薬は低カルシウム血症（発生率 20～30%）を引き起こし、結合薬は GI 不耐性を引き起こします。
• 高額な費用: 年間の治療費は患者 1 人あたり 20,000 米ドルを超え、無保険の人々に負担をかけています。
• アクセス格差: 地方では医療資源が不足しており、透析普及率はわずか 60% にとどまっています。
• ジェネリック医薬品との競争：バイオシミラーが損失を軽減するものの、2023年にセンシパーの特許切れにより収益が減少する。

競争環境

市場は寡占状態にあり、トップ企業がシェアの 70% を占めています。

ViforとAmerican Renal Associates（2021年）のような戦略的合併や、年間5億米ドルの研究開発投資が競争を決定づけています。アムジェンは徐放性製剤への注力により、リーダーシップを確立しています。

地域別インサイト

米国中心ではありますが、バリエーションも存在します。

• 南部：CKD の負担が最も高く（アパラチア地方での有病率は 16%）、市場シェアは 35% を占めています。
• 西部: テクノロジーの導入によりオンライン チャネルが拡大 (普及率 25%)。
• 北東部：密集した透析ネットワークが病院の売上を支えています。

カリフォルニア州とテキサス州が合計収益20%でトップ。

将来の展望と機会

2032年までに市場規模は98億8000万米ドルに達すると予測されており、その鍵となるのは、PTH反応に対する遺伝子プロファイリングを含む精密医療です。CaSRを標的とした遺伝子治療とウェアラブルバイオセンサーは、さらに20億米ドルの市場規模拡大につながる可能性があります。バイオシミラー行動計画（2023年）により、コストは30%削減され、アクセスが拡大します。

環境に優しいバインダーなどのサステナビリティへの取り組みは、ESGのトレンドと一致しています。遠隔医療プロバイダーとの提携により、地方へのリーチが拡大し、2030年以降は年平均成長率（CAGR）10%の成長が見込まれます。

結論

米国のSHPT治療市場は、慢性疾患の流行下における回復力の好例です。予測年平均成長率（CAGR）は7.5%であり、イノベーションと公平性への投資において、ステークホルダーにとって計り知れない機会を提供しています。CKDが公衆衛生上の危機へと発展するにつれ、薬物療法、生活習慣介入、そして政策改革を統合した包括的な戦略が極めて重要になります。ステークホルダーは、この成長軌道を活かすために、患者中心のモデルを優先する必要があります。

出典:
https://www.fortunebusinessinsights.com/industry-reports/us-secondary-hyperparathyroidism-shpt-treatment-market-101664