コンタクトレンズ市場のデジタル化による販売増加トレンド
コンタクトレンズ市場：規模・シェア・予測（2024-2032年）
近年、視力矯正のニーズの高まりやライフスタイルの変化に伴い、コンタクトレンズ市場 は世界的に急速な成長を遂げています。フォーチュン・ビジネスマイン（Fortune Business Insights）が2024年4月に発表した最新の業界レポート『コンタクトレンズ市場規模、シェア及び業界分析：モダリティ別（再利用可能型と使い捨て型）、設計別（トーリック、多焦点、球面）、素材別（ソフト、ガス透過性{オルソケラトロジーおよび強膜}、その他）、流通経路別（眼科医、小売店、オンラインストア）、および地域別予測、2024-2032年』によると、世界のコンタクトレンズ市場規模は2023年に104億5000万米ドルと評価されました。2024年には110億8000万米ドルから始まり、予測期間末の2032年には183億米ドルにまで拡大すると見込まれており、**年平均成長率（CAGR）は6.5%を記録する見通しです。特に、北米地域は2023年に全体の34.45%**という最大の市場シェアを占め、依然として強固なリーダーシップを維持しています。このような背景を踏まえ、本稿ではコンタクトレンズ市場の詳細な分析、主要な成長要因、セグメントごとの動向、今後10年間の展望について、徹底的に掘り下げていきます。市場の理解を深め、ビジネス戦略立案の参考にしていただくための総合的な情報を提供します。
- コンタクトレンズ市場の概要と成長要因
コンタクトレンズは、眼鏡に次ぐ代表的な視力矯正ツールです。眼に直接装着する形状のため、自然な視界を得られること、スポーツやファッションシーンで眼鏡が不便な場合に好まれることなどが主な理由です。市場の拡大は、複数の要因が重なって起こっています。
1.1 視力障害の有病率の増加
世界保健機関（WHO）のデータによれば、近視（マイオピア）の流行は世界的に深刻化しています。特に東アジア地域（中国、日本、韓国、台湾など）では、若年層における近視の割合が非常に高く、小学生・中学生の多くが視力矯正を必要としています。加えて、高齢化社会の進展により、老眼（プレバイオピア）の問題を抱える60歳以上の人口も増加しています。老眼矯正用の多焦点コンタクトレンズの需要が、この層から大きく伸びています。視力障害を持つ人口が増えれば増えるほど、コンタクトレンズの販売数量は必然的に上昇します。
1.2 ライフスタイルの変化とファッション化
かつては「医療機器」というイメージが強かったコンタクトレンズも、現在ではファッションアイテムとして定着しつつあります。色付きコンタクトレンズ（カラコン）は、特に若い女性を中心に人気が高く、イベントや日常のメイクの一部として利用されています。SNS（ソーシャル・ネットワーキング・サービス）の普及もこの傾向を加速させました。写真や動画で美しい目元を演出したいというニーズが、デザイン性の高いレンズの販売を後押ししています。さらに、スポーツやアウトドア活動の機会が増えた現代社会では、眼鏡が外れやすい・壊れやすいという不便さを感じ、コンタクトレンズを好む人が増えています。
1.3 技術革新と素材の進化
コンタクトレンズの快適性と安全性は、素材技術の進歩によって大きく改善されてきました。従来のレンズは酸素が角膜に十分に供給されず、装用時間が短かったり、目の乾燥を引き起こしたりする問題がありました。しかし、高酸素透過性素材の開発により、酸素が角膜にスムーズに届くようになり、長時間装用が可能となりました。これにより、毎日交換するのではなく、2週間や1か月間使用できる製品も登場し、利便性が向上しました。
また、紫外線（UV）カット機能、ブルーライトカット機能を備えたレンズも次々と市場に投入されています。スマートフォンやパソコンの使用時間が長くなる現代では、ブルーライトによる目の疲れやダメージが懸念されており、その対策として機能性レンズの需要が伸長しています。
1.4 オンライン販売の急拡大（Eコマースの台頭）
COVID-19パンデミック以降、対面診療を避ける動きが広がり、コンタクトレンズのオンライン購入が爆発的に増加しました。以前は眼科医での処方箋が必須だったこともありますが、多くの国で規制が緩和され、インターネットで簡単に購入できる環境が整いました。Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングなどの大手ECサイトだけでなく、メーカー直営のオンラインストアも活発に運営されています。自宅にいながら必要な情報を入力し、数日後には商品が届くという利便性は、特に忙しいビジネスパーソンや学生に好評です。オンライン経由の販売シェアは、予測期間中に大幅に増加すると見られています。
1.5 高齢化社会と多焦点レンズの需要
先進国を中心に人口の高齢化が進んでいます。60歳以上の層が増えると、老眼による視力低下が問題になります。眼鏡では遠近両用レンズが使われますが、コンタクトレンズでは多焦点レンズがその役割を担います。多焦点コンタクトレンズは、遠方と近方の両方が見やすいように設計されており、日常生活に大きな支障が生じる高齢者にとって救世主です。特に、アクティブに活動したい高齢者（例：ゴルフ、旅行）が多焦点レンズを積極的に採用する傾向が強まっています。市場調査会社によれば、多焦点レンズのセグメントは予測期間中、最も高い成長率（CAGR 8.2%以上）を示すと予測されています。
- セグメント別詳細分析
フォーチュン・ビジネスマインのレポートでは、市場が以下の5つのカテゴリーに分類され、それぞれの動向が明らかにされています。各セグメントのシェアと今後の見通しを確認しましょう。
2.1 モダリティ別（再利用可能型と使い捨て型）
コンタクトレンズは、使用期間によって大きく2つに分けられます。市場の主流は圧倒的に使い捨て型です。
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モダリティ |
特徴 |
2023年シェア |
成長要因 |
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使い捨て型 |
1日、2週間、1か月で廃棄する。衛生面で優位。 |
約75% |
感染症リスクの低減、管理の簡便さ。特に1日使い捨ては「その都度新鮮」という安心感から学生やビジネスマンに人気。 |
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再利用可能型 |
3か月～1年以上使用可能。洗浄・消毒が必要。 |
約25% |
コストパフォーマンス（長期使用で1本あたりの費用が安い）。習慣化している長年のユーザーに根強い需要。 |
使い捨て型の詳細
使い捨て型はさらにサブカテゴリーに分かれます。
- 1日使い捨て：最も成長が速いセグメントです。日本では「ワンデー」と呼ばれ、非常にポピュラーです。装着後の清掃が不要で、常に新しいレンズを使用できるため、細菌繁殖による結膜炎などのリスクが大幅に低減されます。価格も手頃で（1本あたり数百円～1500円程度）、ドラッグストアやコンビニでも気軽に購入可能です。2023年の使い捨て型シェアの中では、1日使い捨てが約45%を占めました。
- 2週間使い捨て：視力矯正効果とコストのバランスが取れています。少し長めの装用期間のため、1日使い捨てよりは経済的です。中高年の定着率が高いです。
- 1か月使い捨て：高酸素透過性素材が使用されることが多く、視界の安定性に優れます。やや価格が高めですが、経済的なユーザー層に支持されています。
一方、再利用可能型は、以前は主流でしたが、衛生面への意識が高まった現代では徐々にシェアを減らしています。ただし、経済的な理由や、長年の習慣で使い続けているユーザーが一定数存在するため、今後も一定の需要は持続すると見られます。再利用型は適切な消毒液とケースの管理が必須であり、それが面倒に感じる人も多いです。
予測
2024-2032年、使い捨て型（特に1日使い捨て）のシェアはさらに拡大し、2032年には全体の78%以上を占めると予測されています。再利用可能型は緩やかな減少傾向を示します。
2.2 設計別（トーリック、多焦点、球面）
コンタクトレンズの「設計」は、矯正する視力の問題によって決まります。以下の3種類が主流です。
2.2.1 球面レンズ（Sphere）
最も基本的で一般的なタイプです。近視（マイオピア） や 遠視（ハイパーメトロピア） の矯正に使われます。曲面が均一（球面）であるため、製造が比較的簡単でコストが安いです。2023年の市場シェアは**約60%**を占め、最大のセグメントです。若い世代の近視矯正需要が中心です。成長率は他のセグメントに比べてやや低め（CAGR 5.0%）ですが、依然として市場の基盤です。
2.2.2 トーリックレンズ（Toric）
乱視（アスティグマティズム） の矯正に使用されます。乱視は、角膜や水晶体の曲率が均一でないために、遠くも近くもぼやけて見える状態です。トーリックレンズは、球面レンズとは異なり、2つの異なるカーブ（例：上部と下部で曲率が異なる）を持つことで、乱視を矯正します。装着時にレンズが回転しないように設計されており、正確な位置に固定される必要があります。2023年のシェアは**約20%**でした。乱視を持つ人の割合は全視力障害者の約30%とされ、需要は安定しています。さらに、若年層だけでなく、中高年でも乱視が併発することが多いため、今後も着実な成長が期待できます。CAGRは6.0%と予測されます。
2.2.3 多焦点レンズ（Multifocal / Bifocal）
先述した通り、遠方と近方の両方がはっきり見えるように設計されたレンズです。主に老眼（プレバイオピア）の矯正に使われます。レンズの表面に複数の焦点領域（例：中心が遠方、上下が近方）が作られており、目の動きによって適切な焦点が選ばれます。技術的に複雑で、価格も高め（球面レンズの1.5～2倍）ですが、高齢化社会における需要は爆発的です。2023年のシェアは約20%でしたが、予測期間中最も高い成長率（CAGR 8.5%）を示すと見られています。2032年にはシェアが25%以上に達する可能性があります。特に、日本や欧州などの高齢化が進む国々で需要が急増しています。メーカー各社は、より自然な見え心地を実現する新技術（例：ゾーンフリー多焦点）を開発しており、それが成長を後押ししています。
📌 ポイント
設計別の市場は「球面」が依然として最大だが、「多焦点」の急成長が市場全体の拡大に大きく貢献している。老眼人口の増加は避けられないため、このセグメントの重要性は今後10年で飛躍的に高まる。
2.3 素材別（ソフト、ガス透過性{オルソケラトロジーおよび強膜}、その他）
素材は装用感、酸素透過性、耐久性に直結します。大きく3つに分類されます。
2.3.1 ソフトレンズ（Hydrogel / Silicone Hydrogel）
市場の圧倒的多数（2023年シェア 85%以上）を占めるのがソフトレンズです。名前の通り柔らかい素材で、眼に装着した時の違和感が少なく、装着が容易です。さらに、酸素透過性を高めるためにシリコーンを配合したシリコンハイドロゲルが主流となっています。これにより、従来のハイドロゲルよりはるかに多くの酸素が角膜に届くようになりました。
利点
- 装着が簡単で痛みが少ない。
- さまざまな設計（球面、トーリック、多焦点）が可能。
- 価格が比較的安価。
欠点
- 耐久性がやや低い（使い捨て型が主流のため問題にはならない）。
- 高酸素透過性素材でも、ガス透過性レンズ（後述）に比べると酸素供給量は少ない。
ソフトレンズは、使い捨て型と組み合わせて提供されることがほとんどです。特に1日使い捨てのソフトレンズは、快適性と安全性を両立させ、市場を牽引しています。
2.3.2 ガス透過性レンズ（RGP: Rigid Gas Permeable）
ガス透過性レンズは、柔らかいソフトレンズとは異なり、硬い素材で作られています。かつては「ハードレンズ」と呼ばれ、酸素が通じないため装用時間が短かったですが、1970年代以降、高酸素透過性の素材（例：フロロカーボン、シリコーン系樹脂）が開発され、RGPとして再登場しました。
特徴と利点
- 高い画像品質: 硬い素材のため、角膜の形状に正確にフィットし、歪みが少なく、シャープな視界を提供します。特に乱視の矯正に優れています。
- 優れた酸素透過性: ソフトレンズよりもはるかに多くの酸素を角膜に供給できるため、長期装用が可能（消毒液に浸けて次の日も使用）です。角膜の健康維持に貢献します。
- 耐久性: ソフトレンズに比べ壊れにくく、適切な手入れをすれば数年間使用可能です（再利用可能型が主）。
欠点
- 装着時の違和感が大きい。装着に慣れるまで時間がかかり、眼科医でのフィッティング（調整）が必須。
- 価格が高め（1本あたり数万円）。定期的な調整が必要な場合も。
- 取扱いが複雑（洗浄・消毒の手順が多い）。
ガス透過性レンズのシェアは2023年で**約14%**でした。主に以下のようなケースで選ばれます。
- 乱視が強く、ソフトレンズでは矯正できない場合。
- スポーツ選手（特に格闘技、球技）で、衝撃に強いレンズが必要な場合。
- オルソケラトロジー（後述）用の特殊なRGP。
2.3.3 オルソケラトロジーレンズおよび強膜レンズ（ガス透過性のサブカテゴリー）
ガス透過性レンズの中には、特殊な用途のものがあります。市場では特に注目されているのがこの分野です。
オルソケラトロジーレンズ
オルソケラトロジー（Ortho-k） とは、寝ている間にコンタクトレンズを装着し、角膜の形状を一時的に変形させる治療法です。昼間は裸眼で良い視力が得られるようになります。近視の進行を抑制する効果もあるとされ、特に子供の近視進行防止のために親が選択することが多いです。
- 市場への影響: アジア太平洋地域（特に中国、日本、韓国）で急速に普及しています。2023年時点でガス透過性レンズ全体に占める割合は約15%ですが、年平均成長率は10%以上と非常に高いです。将来的には、近視対策の一環として学校や眼科クリニックで推奨される可能性があります。
強膜レンズ（Scleral Lens）
角膜が変形している（角膜変性症、角膜混濁など）患者向けの特化レンズです。レンズが角膜ではなく、強膜（白目の部分）に乗るように設計されています。そのため、角膜に直接触れないため、痛みが少なく、酸素供給も優れています。希少なケース用ですが、難治性の眼疾患を持つ患者にとって救命的な製品です。高価格のため全体のシェアは小さい（1%未満）ものの、医療ニーズに応じた成長が期待されています。
2.3.4 その他
- ハイブリッドレンズ: ソフトレンズの外側をRGPで覆ったもの。快適性と高画質を両立させるが、高価。
- バイオマテリアルの新素材: 生体親和性が高く、アレルギーが起きにくい素材の開発が進んでいます。
素材別の予測
ソフトレンズが依然として圧倒的シェアを保ちますが、ガス透過性（特にオルソケラトロジー）の成長率が突出しています。2032年には、ガス透過性レンズのシェアが**16%**にまで上昇すると予測されています。
2.4 流通経路別（眼科医、小売店、オンラインストア）
コンタクトレンズを購入する場所も多様化しています。以下に各経路の現状と展望を示します。
2.4.1 眼科医（医療機関）
従来最も信頼性の高い経路でした。処方箋の発行とフィッティング（レンズの適切なサイズや曲率の調整）を行います。特に、ガス透過性レンズや多焦点レンズ、トーリックレンズなど、専門的な知識を要する製品は眼科医を通じて購入するのが一般的です。2023年のシェアは約35%。
利点: 専門家の指導が受けられ、トラブル時の対応が迅速。
課題: 予約が必要、待ち時間長い、診療費が高くなる場合がある。
動向: オンライン購入が増える中でも、初回装着時や複雑なケースでは眼科医の重要性は変わらず。むしろ、安全性の意識が高まるにつれ、一定の需要は持続します。特に高齢者や初めてコンタクトレンズを使う人は眼科を訪れます。
2.4.2 小売店（ドラッグストア、薬局、眼鏡店）
日本ではドラッグストアや調剤薬局がコンタクトレンズを販売するケースが非常に多いです。店内に専門のコンタクトレンズコーナーがあり、薬剤師や認定コンタクトレンズフィッターが対応します。2023年のシェアは約30%。
利点: 近くにある、即日購入可能、処方箋が不要な製品（過矯正防止のため度数制限あり）も多い。
課題: 取扱商品が限られる、専門的なアドバイスが得られにくい場合がある。
動向: ドラッグストア各社はオンラインストアと連動した「オムニチャネル」戦略を強化。店頭で試着し、オンラインで注文できるサービスを提供し始めている。特に若年層の利用が目立ちます。
2.4.3 オンラインストア（Eコマース）
最も成長が著しい経路です。2023年のシェアは**約35%**に達し、眼科医とほぼ並んでいます。COVID-19以降、飛躍的に伸びました。
主なプレイヤー
- 国内大手ECサイト: Amazon.co.jp、楽天市場、Yahoo!ショッピング、メルカリ
- メーカー公式オンラインショップ: ソフトコンタクトレンズ各社（エバーclear、BioHome HDなど）の直営店
- 専門コンタクトレンズEC: コンタクトレンズの通販専門サイト（例：Lenet、アイコンタクトなど）
利点
- 利便性: 24時間いつでも注文可能。自宅に届く。
- 価格競争: 店舗運営費がかからないため、店頭より安価なことが多い。クーポンやポイント還元も頻繁。
- 品揃えの豊富さ: ほぼすべての商品が購入可能。珍しい度数やデザインも選べる。
- 過去の購入履歴の保存: 次回も同じものを簡単にリピートできる。
課題
- 処方箋の要件: 日本では原則、処方箋（眼科医の検査結果）が必要です。多くのオンラインストアは「処方箋の画像をアップロード」するシステムを導入していますが、手間です。規制緩和の動きもあり、今後はさらに簡単になる可能性があります。
- フィッティングの問題: 特にRGPやトーリックは、適切にフィットしないと視力矯正効果が得られない、または眼にダメージを与える可能性があります。オンライン購入の際は、事前に眼科で検査を受け、正確な数値を知ることが必須です。
- 偽物・品質問題: 第三国からの安価な偽物が流通するリスクがあります。信頼できる販売店を選ぶ必要があります。
予測
オンラインストアのシェアは、予測期間中に急増し、2032年には45%以上に達すると見られています。スマートフォンの普及と、デジタル決済の定着がこの流れを後押しします。眼科医とオンラインを連携させた「テレメディシン」のサービスも登場し、遠隔で相談しながら購入できる仕組みが標準化していくでしょう。
2.5 地域別予測
2.5.1 北米（2023年シェア 34.45%）
市場の最大の地域です。高所得層の存在、健康意識の高さ、テクノロジーへの投資が成長を支えています。特にアメリカでは、オンライン購入が非常に一般的です。多焦点レンズの需要が突出し、50代～60代の利用が盛んです。また、スポーツ用やファッション用のカラコンも人気。予測期間中もCAGR 6.0%で成長し、2032年にも依然として最大の市場であり続けます。
2.5.2 アジア太平洋（APAC）（2023年シェア 42%）📌 最大の成長地域
2023年のシェアは北米を上回る**42%**でした！ この地域は最も注目すべき市場です。主な要因は以下の通りです。
- 人口規模と近視の蔓延: 中国（約6億人の近視者）、インド、日本、韓国、台湾など、東アジア全体で近視率が極めて高いです。中国では10代の子供の80%以上が近視とされる報告もあります。
- 経済発展と可処分所得の増加: 中産階級が急増し、コンタクトレンズを購入できる余裕ができました。
- 若年層のファッション志向: カラコンが若者の間で流行。SNSの影響で「目元を可愛く見せる」ことが重要視されています。
- オンラインショッピングの爆発的成長: 中国のアリババ（タオバオ）、京東、日本の楽天など、地域に合わせたECプラットフォームが発達。モバイル決済が一般的です。
- オルソケラトロジーの普及: 子供の近視進行防止のため、親がオルソケラトロジーLensを積極的に購入しています。
APACのCAGRは7.8%と、全ての地域中で最も高く、2032年には市場規模が70億米ドルを超えると予測されています。特に中国とインドの成長が牽引します。
2.5.3 欧州（2023年シェア 15%）
ドイツ、フランス、イギリスが中心です。高齢化が進んでおり、多焦点レンズの需要が主導しています。ファッションとしてのコンタクトレンズも一定の需要がありますが、北米やAPACに比べると成長は穏やか（CAGR 5.5%）。規制が厳しいため、新規参入障壁が高く、既存大手企業が市場を支配しています。
2.5.4 その他の地域（中東・アフリカ、ラテンアメリカ）
中東では富裕層の増加に伴い市場が伸びていますが、全体のシェアは小さい（2023年 4.5%）。ブラジルやメキシコなどで成長が見込まれるが、経済的不安定さや医療インフラの不足が課題です。CAGRは6.0%前後と予測されます。
- 市場の課題と将来の展望
課題
- 感染症リスクと安全性への懸念
不適切な使用（例：交換期間を過ぎて使う、消毒しない）による眼感染症（結膜炎、角膜炎）が問題視されています。特にオンライン購入では、正しい使い方を理解しないで購入するケースもあり、教育の必要性が指摘されています。 - 規制の厳格化
各国は消費者保護のため、コンタクトレンズの販売に関する規制を強化する傾向にあります。処方箋の義務化、販売店の免許制度などが導入されると、市場参入障壁が高まり、成長を若干抑制する可能性があります。 - 価格感度の高さ
特に新興国では、経済的な理由で高価格なレンズ（多焦点、RGP）を購入できない層が存在します。安価な1日使い捨てが主流になるでしょう。 - 環境問題
使い捨てレンズの廃棄物が環境に与える影響が懸念されています。プラスチック製のレンズとケースが海や土に流れ、微細プラスチック汚染の原因になる可能性があります。メーカー各社は生分解性素材の開発に力を入れています。
将来のトレンド
- スマートコンタクトレンズの登場
Googleや第二の目社などが開発を進める「スマートコンタクトレンズ」は、血糖値や体温を測定したり、AR（拡張現実）を表示したりする可能性があります。まだ商業化には至っていませんが、10年後には市場に参入する見込みです。これは市場に新たな需要を生み出すでしょう。 - パーソナライズド・メディシン
AIを活用した眼の検査で、個々の角膜形状に完璧にフィットするカスタムメイドレンズの提供が進みます。特にRGP分野で進展が期待されます。 - サステナブル（持続可能）な製品
環境に優しい素材（生分解性ポリマー）を使用したレンズや、リサイクル可能なパッケージが主流になっていくでしょう。消費者の環境意識の高まりに応える形です。 - テレメディシンの普及
オンラインで眼科医とつなぎ、検査結果を基に適切なレンズを推薦するサービスが広がります。これにより、地方在住者でも質の高いアドバイスを受けながら購入できるようになります。
まとめ
フォーチュン・ビジネスマインのレポートが示すように、世界のコンタクトレンズ市場は6.5%という堅調な成長を続けています。2023年の104億5000万米ドルから、2032年には183億米ドルへ拡大する見通しです。特に、使い捨て型（特に1日使い捨て）、多焦点レンズ、オンライン販売、そしてアジア太平洋地域が市場を牽引しています。技術革新は快適性と安全性を向上させ、一方で高齢化社会や近視の蔓延が確実な需要基盤を作り出しています。
企業にとっては、以下のような戦略が有効です。
- アジア太平洋市場への投資（特に中国・インド）
- オンライン販売チャネルの強化と、処方箋プロセスの簡素化
- 高齢者向け多焦点レンズの開発とマーケティング
- サステナブルな製品ラインナップの拡充
- 消費者教育（適切な使用方法の普及）
今後10年間、コンタクトレンズは単なる視力矯正ツールを超え、健康管理・ファッション・テクノロジーの融合した「次世代アイウェア」として進化していくでしょう。企業および投資家は、この動向をしっかりキャッチアップし、機会を捉えることが重要です。
