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トラベルリテール市場の販売チャネル別市場成長

トラベルリテール(Travel Retail)は、世界の観光産業の成長とともに急拡大している有望な市場です。とくに、空港・港湾・国境・クルーズ船・鉄道駅など、旅行動線上のあらゆる場所で展開される小売ビジネスは、ブランド各社にとって重要な収益源になりつつあります。Fortune Business Insights の調査レポート「Travel Retail Market」を参考にしながら、トラベルリテール市場の規模、セグメント別動向、地域別の特徴、今後の成長要因と課題について詳しく見ていきます。

  1. トラベルリテール市場の概要と規模

トラベルリテール市場とは、旅行者を主な顧客とする小売ビジネスの総称であり、典型的には空港免税店をイメージしやすいものの、実際には「免税店・課税店」を含めた幅広いチャネルを指します。
化粧品・香水、高級酒・ワイン、菓子・高級食品、タバコ製品、ファッション・アクセサリー、さらには土産品や旅行用品といった多様な商品カテゴリーが展開され、旅行者に「特別な購買体験」を提供しています。

同レポートによると、世界のトラベルリテール市場規模は2024年に約663億米ドルと推計されており、2025年には725億1000万米ドル、2032年には1454億6000万米ドルに達すると予測されています。2025年から2032年までの年平均成長率(CAGR)は10.46%とされており、世界の小売業全体の成長を大きく上回る高い伸びが見込まれています。

さらに地域別では、アジア太平洋地域が2024年時点で世界市場の約51.21%という過半数のシェアを獲得しており、世界のトラベルリテール成長を牽引している点が特徴的です。

  1. 市場成長を支える主な要因

(1) 国際旅行者数の回復と拡大

国際線の運航再開やビザ発給の緩和、観光振興政策などを背景に、世界の海外旅行者数はパンデミック前の水準へ着実に近づいています。
トラベルリテールは航空・観光需要と密接に連動しているため、旅行者数の増加がそのまま売上拡大に直結します。

(2) 中間所得層と富裕層の拡大

新興国を中心に中間所得層および富裕層が増加しており、「海外旅行+ラグジュアリー消費」を楽しむ層が世界的に広がっています。
ブランド物の化粧品・香水、高級酒、デザイナーによるファッション・アクセサリーなど、高価格帯商品の需要拡大が、トラベルリテール市場の単価向上につながっています。

(3) 空港・港湾の“商業施設化”

近年の空港・港湾は、単なる交通インフラから、「ショッピングモール」「エンターテインメント施設」としての性格を強めています。
トランジット時間の長さを逆手に取り、

  • ブランドブティック
  • 高級レストラン
  • ギフトショップ
    など多彩な店舗が誘致され、旅行者の消費機会が飛躍的に増えています。

(4) オムニチャネル・デジタル化の進展

オンライン事前予約、モバイルアプリによるクーポン配布、デジタルサイネージを活用したプロモーションなど、トラベルリテールでもデジタル活用は急速に進展しています。
「出発前にオンラインで注文し、空港で受け取る」といったハイブリッドな購買体験が浸透しつつあり、これが新たな需要を掘り起こしています。

  1. 製品タイプ別分析

レポートでは、トラベルリテール市場は以下の製品タイプ別に分析されています。

  • 化粧品・香水
  • ワイン・スピリッツ
  • 菓子・高級食品
  • タバコ製品
  • ファッション・アクセサリー
  • その他

(1) 化粧品・香水

化粧品・香水カテゴリは、トラベルリテールにおける最大の売上構成比を占めることが多く、グローバルブランドの激戦区です。
理由としては、

  • 免税価格による「お得感」
  • 旅行者向け限定パッケージ・セット商品の豊富さ
  • ギフト需要の高さ
    が挙げられます。

またアジア圏の旅行者、特に中国・韓国・日本などの顧客は、スキンケア・メイクアップ商品への関心が高く、「まとめ買い」「代理購入(代購)」などを通じて高い売上を生み出しています。

(2) ワイン・スピリッツ

ワイン・ウイスキー・ブランデー・リキュールなどのスピリッツは、免税店の代表的な商材のひとつです。

  • 免税による価格優位性
  • 空港・港湾限定ボトル、ビンテージ品、コレクター向け商品
  • ギフト需要
    などが売上を押し上げています。

特にシングルモルトウイスキーや高級コニャックなど、プレミアムレンジのスピリッツは利益率も高く、メーカー・小売業双方にとって重要なカテゴリーです。

(3) 菓子・高級食品

チョコレート、スナック、ナッツ、グルメギフト、地域特産品など、菓子・高級食品もトラベルリテールでは欠かせないジャンルです。
「家族や同僚へのお土産」としての需要に支えられ、衝動買いが起こりやすいという特徴を持っています。
また、ブランド菓子メーカーが空港限定フレーバーや大型パックを展開することで、旅行者の購買意欲をかき立てています。

(4) タバコ製品

タバコ製品は、一部の地域では依然として免税店売上の主要なカテゴリーです。ただし、

  • 各国での規制強化
  • 健康志向の高まり
  • 喫煙人口の減少
    といったマクロトレンドの影響を強く受けており、長期的には成長余地が限定的とみる向きもあります。

一方で、葉巻・プレミアムシガーなどニッチな高級タバコの需要は一定数存在し、富裕層向け商品としての位置付けは維持されています。

(5) ファッション・アクセサリー

ラグジュアリーブランドのバッグ、財布、時計、ジュエリー、サングラスなどのファッション・アクセサリーも、トラベルリテールで高い人気を誇ります。
空港内のブティックはブランドのショーケースとしての役割も兼ねており、最新コレクションや限定品を打ち出すことで、ブランド価値の向上と売上拡大を同時に狙っています。

  1. セクター別:免税店・課税店

レポートでは、トラベルリテール市場を「免税店・課税店」というセクター別にも分析しています。

  • 免税店(Duty-Free
    国際線ゲートエリアなどで、関税や一部税金が免除された価格で販売される店舗。高級品や嗜好品の販売に強み。
  • 課税店(Duty-Paid
    市中の都心店舗や国内線ターミナル、ホテル、鉄道駅など、通常の税率で販売される店舗。旅行者だけでなく地元顧客も対象とするケースがある。

従来は免税店が市場の主役でしたが、近年は

  • 都市型トラベルリテール(ダウンタウン免税店)
  • 観光地ホテル内の高級ブティック
    など、課税店セクターも存在感を増しており、「旅行文脈での消費」を広く取り込もうとする動きが強まっています。
  1. 販売チャネル別の動向

トラベルリテール市場は、販売チャネル別に以下のように分類されています。

  • 空港・航空会社店舗
  • 港湾・クルーズライン店舗
  • 国境・都心ホテル店舗
  • 鉄道駅
  • その他

(1) 空港・航空会社店舗

空港は依然としてトラベルリテールの中核チャネルです。

  • 国際線旅客の集中
  • 免税店の集積
  • ラウンジや機内販売との連動
    により、最も大きな売上シェアを有すると考えられます。

一部航空会社は、自社アプリや機内エンターテインメントと連動したショッピング機能を強化しており、搭乗前後・機内・到着後を通じたシームレスな購買体験を提供し始めています。

(2) 港湾・クルーズライン店舗

クルーズ旅行の人気上昇に伴い、クルーズ船内のブティックや寄港地港湾の免税店も重要なチャネルになっています。
クルーズ旅行者は長期間船内で過ごすため、

  • ブランド品のゆったりとした試着・比較
  • 高級酒や宝飾品の購買
    など、高単価商品の販売に適した環境が整っています。

(3) 国境・都心ホテル店舗

陸路国境付近の免税店や、主要都市のダウンタウン免税店、高級ホテル内ブティックも「国境・都心ホテル店舗」としてトラベルリテールの一角を占めています。
都市型観光やショッピングツアーの増加により、こうした店舗は旅行者の「自由時間」を取り込む重要な売場になっています。

(4) 鉄道駅

高速鉄道(例:欧州のTGV、中国の高速鉄道、日本の新幹線など)の発達した地域では、主要駅がショッピングモール化しており、トラベルリテールの新たな舞台となっています。
通勤客と旅行者が混在することで、日常消費と観光消費の両方を取り込める点が特徴です。

  1. 販売媒体別:オフラインとオンライン

レポートでは販売媒体別に「オフライン」「オンライン」の2つに大別しています。

(1) オフライン(店舗販売)

現時点では、トラベルリテールの主戦場は依然として実店舗です。
旅行者は、

  • 実物を手に取って試す喜び
  • その場で持ち帰る満足感
  • 店頭プロモーションやサンプル配布
    といった要素を重視する傾向にあります。

特に化粧品・香水・ファッションなど、体験価値の高いカテゴリーでは、オフライン店舗の重要性は今後も維持されると見込まれます。

(2) オンライン(デジタル販売)

一方で、オンライン販売は最も成長率の高い媒体のひとつです。

  • 空港受け取り型の事前予約
  • 航空会社のモバイルアプリ内ショッピング
  • デジタルクーポン・会員プログラム
    などが普及し、「オンラインで注文 → 旅行中に受け取る」という新しい購買フローが定着しつつあります。

今後は、AIを活用したレコメンドや、AR(拡張現実)によるバーチャル試着・メイク体験など、オンラインとオフラインを融合した高度なオムニチャネル戦略が各社の競争軸になると考えられます。

  1. 地域別の市場動向

(1) アジア太平洋地域

アジア太平洋は、2024年に世界トラベルリテール市場の約51.21%を占める最大地域です。

  • 中国、韓国、日本、東南アジア諸国の海外旅行需要
  • 中間所得層・富裕層の急増
  • ハブ空港(シンガポール、香港、ソウル、ドバイなど)における免税店の高度化
    が主要な成長ドライバーです。

特に中国人旅行者の購買力は依然として強く、化粧品・高級ブランド・高級酒の需要を力強く支えています。

(2) 欧州

欧州は、観光地としての歴史的な魅力と、大手空港(ロンドン、パリ、フランクフルト、アムステルダム等)の存在から、トラベルリテールの成熟市場といえます。
ラグジュアリーブランドの本場でもあるため、高級ファッション・アクセサリーやプレミアムスピリッツなどの分野で安定した需要があります。

(3) 北米

北米はビジネス渡航・観光渡航の双方が多く、主要空港を中心にトラベルリテールが展開されています。
オンライン事前予約やロイヤリティプログラムの活用など、デジタル分野での先進的な取り組みが特徴的です。

(4) 中東・アフリカ

中東地域は、ドバイやドーハなど国際ハブ空港を擁し、トランジット客を中心にトラベルリテールが急成長しているエリアです。
豪華な空港施設とラグジュアリーブランドの集積により、旅行者に「ショッピング・デスティネーション」として認知されつつあります。

  1. 今後の課題とビジネスチャンス

(1) 規制・マクロ環境リスク

トラベルリテールは、

  • 為替変動
  • 政治的不安定要因
  • 入国規制・ビザ政策
  • 酒税・タバコ税・持ち込み制限
    などの影響を強く受ける産業です。
    特に嗜好品カテゴリは、規制強化による販売制限リスクを常に内包しています。

(2) 偽造品・ブランド毀損リスク

ラグジュアリーブランドにとって、真正品の証明とブランド価値の維持は重要な課題です。
サプライチェーン管理の高度化や、ブロックチェーン・RFIDなどによるトレーサビリティ強化が、今後の差別化要因になり得ます。

(3) サステナビリティとエシカル消費

環境配慮型パッケージ、フェアトレード原料の使用、カーボンフットプリント削減など、サステナビリティに対する取り組みは、トラベルリテールにおいても無視できません。
特に若年層旅行者はエシカル消費への意識が高く、ブランドの社会的責任が購買決定要因に組み込まれつつあります。

(4) デジタル体験とパーソナライゼーション

AIを活用したパーソナライズドオファー、位置情報を利用したリアルタイムプロモーション、AR/VRによる体験型コンテンツなど、デジタル技術を活かした「体験価値の向上」が今後の鍵となります。
オンライン・オフラインを連動させたオムニチャネル戦略を、いかに旅行者のストレスなく提供できるかが、競争力の分かれ目になるでしょう。

  1. まとめ

トラベルリテール市場は、

  • 2024年時点で663億米ドル規模
  • 2032年には1454億6000万米ドルへ拡大
  • 2025〜2032年CAGR 10.46%
    という力強い成長が見込まれる有望分野です。

製品タイプ別には、化粧品・香水、ワイン・スピリッツ、菓子・高級食品、ファッション・アクセサリーなどが主力カテゴリーとなり、セクター別では免税店・課税店が相互補完的に市場を形成しています。

特にアジア太平洋地域が世界シェアの過半を占め、世界的な旅行需要回復と中間所得層の拡大に支えられて、今後も高成長が続くと考えられます。
一方で、規制・マクロ環境・サステナビリティといった課題にも対応しつつ、デジタル技術を活用したオムニチャネル戦略を磨き上げることが、トラベルリテール市場での競争優位を確立するうえで不可欠となるでしょう。

https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E6%97%85%E8%A1%8C%E5%B0%8F%E5%A3%B2%E5%B8%82%E5%A0%B4-104620

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